InDesignはページ物を作るソフト?

「何言ってるんですかInDesignはページ物を作るソフトですよ」
ペラものの制作にInDesignで作られたテンプレートを使うことをクライアント(サードパーティ)に説明した時、このセリフを聞いて頭を抱えた。
「少なくとも日本ではそういう認識が業界の標準です」
そうなのだ。
”ペラ物のデザイン(版下)データはイラレで作るのがあたりまえ”
日本ではこれが未だに業界のスタンダード。

ローカライズ(※注1)という仕事柄、アメリカで作られたデザインデータを扱っている。Adobeの本拠地でもあるアメリカで、プロのクリエーターが創りこんだ世界的企業のプロダクトデザインデータだ。それらはすべてInDesignで作られている。ページ物だけでなく、ペラ物、パッケージ、レーベル、すべてだ。
そのおかげでInDesignを使いこなせるようになり、その快適さを日々享受するクリエイティブワークを行っている。

最初のセリフは、あるプロジェクトに関するアンケートでもらった回答だ。そのプロジェクトとは「日本向けのアートワークテンプレートを作る」というもの。そのテンプレートはグローバル(世界各国)で統一して使われているもので、日本向けにローカライズして使えるようにする計画だ。そのテンプレートをInDesignで用意する予定なのだが、日本ではillustratorのテンプレートもないと困るという回答が多かったのだ。
「なんでわざわざ(不適切な)InDesignを使うのかわからない」
ちょ、ちょいタンマタンマ!
「InDesignだからこそ使う」のですよ。。。
やはり日本では”InDesignはページ物を作るソフトウェアである”という認識しかないのだ。確かに一昔前まではそうだった。だから「ペラ物をInDesignで作ろう」という発想がそもそも湧かないのであろう。一度根付いた先入観はなかなか崩れないものなのだと痛感した。
イラレ以上にペラ物を快適に作れるアプリであるというのに!

Adobeのアプリケーションは日々進化し、次々と新バージョンがリリースされている。InDesignの機能も格段に良くなっていてイラレでできることのほとんどがInDesignでも可能になった。今までとても時間のかかった処理が一瞬で可能になっていたりするのに、それを知らないためにいまだに古い方法で時間をかけて処理しているとしたら、そんな馬鹿な話はない。
ベテランのデザイナーほど、古い知識、古いアプリに固執していたりする。新しい知識を取り入れるのが億劫だというのは解る。しかしそこをサボればどんどん取り残されていくだけだ。
悪いけどInDesignくらい使えないと紙系デザイナーはこれから生き残れないよ。イラレが使いこなせるなら簡単に覚えられるはず。

「そもそもInDesignを使えるデザイナーがいません」
「協力会社も外部のデザイナーもみんなイラレを使っています。だからInDesignを取り入れろと言っても・・・」
そう口を濁す。
たとえ効率が悪くとも”今までずっとそのやり方できたし、それで間違いがないからぞのやり方を続ける”
それは確かにリスクはないかもしれない。
しかしそれには成長も進化もない。

※注1 ローカライズとは:平たく言えば翻訳だが、その地域・国の文化や風習にそって、デザインデータを最適化することなので、単純な翻訳を意味しない。テキストだけでなく、場合によってはデザインそのものも大きく変えることもある。

初回公開日:2012.06.16 Saturday

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